◆私が設計を選んだわけ
「なんで設計をやろうと思ったの?」と時々聞かれます。
確かに私の行った学校は実家が工務店とか、大工の娘というパターンがほとんどでした。
公務員の家庭というまるで関わりのない環境に育ちながらも私がこの職業を選んだ訳についてちょっとお話ししようと思います。
根本にあるのは、子供の時に今の実家を新築するのを見て受けた感動です。
現場に通う親にくっついて行って、日々出来上がっていく家を見るのがとにかくおもしろかったんです。
子供にしてみたら新しい家は楽しい迷路のようなもので
この扉を開けると何がでてくるか、ここを曲がったら何処に出るのか
そんな事にワクワクしながら家中を見てまわったものです。
タイル屋さんがタイルをカットしながら、モザイクに貼っていく様を飽きもせず眺めていた記憶もあります。
こんな面白いものを何もないところから作れてしまう事に6歳児だった私はすかり魅了されてしまったのです。
なによりも印象的なのは上棟の時です。
今と違って、クレーンも使わず全て人力で担ぎ上げていくんですが、あっという間に柱が立って、梁が掛かって
でっかい木槌でがんがんとほぞをたたき込んで、みるみるうちに家の形になっていく様は感動です。
そして、その大イベントを更に盛り上げるのがあの「上棟式」なのです。
子供の頃は今日どこそこで上棟式があるという噂が学校でひそひそと伝わってきて
学校から帰るなり現場にとんでいったものです。
建ち上がったばかりの屋根の上に施主と棟梁が登って破魔弓を打つ真似をして
神儀を済ませたあとに、いよいよお待ちかねの「餅投げ」が始まるのです。
紅白の丸餅とともにおひねりを屋根の上から盛大にばらまくのです。
お餅ももちろん嬉しいのですがなんと言ってもおひねりが一番の楽しみでした。
紙に包まれた小銭は大抵5円10円なのですが、
金持ちの家ではたまに銀色にかがやく50円100円が混じっていることがもあって子供にしたら、思わぬ臨時収入でした。
あの土台しかなかったところからあっという間に家の形が出来上がり、祭りでもないのに近所中がゾロゾロと集まってきて
空から餅やら小銭が降ってくるという子供心にもものすごい高揚感が将来の夢を決定させる重要なファクターだったのです。
なによりも、あの4寸柱を担ぎ上げる大工のかっこよかったこと・・・・
しばらくは「大工になる」と堅く心に決めていました。
いろいろものを知るにつれ、女で大工は難しそうだと薄々気づいた事もあって、
少々、軌道修正して設計士の方に進むことにしたというのがこの職業を選んだいきさつだったのです。
金銭的にはあまり儲からない職業ではありますが、
何よりもものを創り出す喜びには代え難いものがあります。
今はちょっと休業中ではありますが、自分の本業は設計であると考えているので
ボチボチと復帰をしていこうと思っています。